10.24.2015

ファイアーウィップ .1

文字通り火を付けて燃やす鞭。

海外ではファイアーウィップは鞭としてもファイアー道具としても人気が有り、その存在は珍しい物では無いです。日本でも扱う人は増えてます。
一方でファイアーウィップは扱う上で普通の鞭以上に注意する事が色々あります。注意する事だらけです。
ただでさえ鞭は取り扱いに注意が必要なのに更に燃えているのだから当たり前なのですが。
・鞭の取り扱い
・燃料の知識
・消火設備
・ファイアー道具の取り扱い
と、それぞれ知識だけでは無く経験に基づいた理解と技術が必須です。
普通の鞭もそうですがファイアーウィップは尚更その辺で振り回せる代物ではありません。
※偉そうに書いてますが、私はアマチュアでプロではありません。


以前、私はファイアーウィップを海外から購入していました。
それは革の鞭同様にコア、ベリー、オーバーレイとレイヤー構造になっていて作りが非常に丁寧、燃料も良く吸い火力も燃焼時間も十分。
ハンドルも長めで炎除けの”鍔”も付いている親切設計でした。

かなり昔の某イベントでの写真。火器の使用等、諸々の許可を取った上で行いました。


良い事尽くしなんですが、自分には扱う上で重さがネックでした。
凄く重い。普段から海外の鞭ばかり、それも重いタイプの鞭を使ってる自分でも重い。
それと各レイヤーはケブラーで編まれているのですがケブラーが凄く薄いので新品の状態から一晩遊んだら、もうあちこち編み目が傷んで来ます。アスファルトの上で連発しようものなら1回の使用で修理が必要になってしまう。
このネックを解消すべくファイアーウィップも自作するようになりました。自作して理解出来た事と、増えた悩みもあります。


先ず、素材のケブラーは繊維が編まれた状態なので、一度お湯に通して乾燥させ縮ませないといけない。
「素材が緩い状態」のままで編んでファイアーウィップを完成させても、燃料を吸わせて燃焼させるとファイアーウィップが変形してしまう
からです。
パラコード同様に、ケブラーを伸ばし平にした状態で編まないと、きっちり製作する事が出来ないです。
薄地のケブラーを使えば綺麗に、硬く編めるのですがファイアーウィップの耐久性は落ちます。
一方で厚地のケブラーを使えばファイアーウィップの耐久性は上がりますが編み目のギャップが大きくなり、全体的に太くなり過ぎてしまう。


ケブラーは非常に丈夫ですが、ファイアーウィップでは燃料を充填して燃焼させた状態でクラッキングするので負荷は相当なものです。
ケブラー生地が薄くても厚くても、編み目がボロボロに痛むのは時間の問題で避けられない事です。
実際、海外のプロのパフォーマーは定期的に自分でメンテナンスをして必要ならオーバーレイも編み直しています。 


演出道具やちょい見せのネタとしてファイアーウィップを使いたいなら、ケブラー・ロープにテーパーを付けて「鞭っぽい形状」で製作する方が目的に合ってると思います。
私が以前製作していたファイアーウィップはこのタイプでした。
ファイアーウィップを扱う人に、その内部構造や定期的なメンテなど専門的な知識と技術が無くても長く使える事、を最優先していたからです。
ただし、この構造だと鞭のテーパーがあまり付かないしクラッキングの技術を十分活かす事は出来ません。
その結果、プロにファイアーウィップを納品後、そのプロの方から「あいつはこんなんでファイアーウィップを作った気になってる」と周囲にクレームを言われた事があります。

Satoru